富津火力発電所(ふっつかりょくはつでんしょ)は千葉県富津市新富25に所在するJERAの天然ガス火力発電所。

概要

東京電力が建設し、1985年12月に1号系列1軸が運転を開始、4号系列までが建設された。火力発電所としては同社鹿島火力発電所、東北電力東新潟火力発電所(緊急設置電源含む)に次いで国内第三位の総出力であり、世界でも最大級の火力発電所である。

本発電所は、東京電力が初めて熱効率の高い1,100℃級コンバインドサイクル発電方式を導入した発電所で、その後1,300℃級改良型コンバインドサイクル発電方式、更には1,500℃級コンバインドサイクル発電方式を導入するなど、東京電力火力発電所の最先端を担っている。特に4号系列は、東芝とGEの共同製品であるH System発電方式を国内で初めて採用し、熱効率59%を実現するなど高い性能を達成している。

2016年からは、1号系列のうち6軸(第7軸は対象外)および2号系列全7軸の計13軸について発電効率の向上を目的に、ガスタービン等の取替工事を順次実施しており、これにより発電効率が1号系列では3.3%もしくは4.2%、2号系列では1,300℃級ガスタービンに更新されることもあり7.1%向上する。2号系列の出力は2017年8月に112万kWに増強した。その後、2019年8月に本工事は完了した。

2016年4月に東京電力から100%子会社の東京電力フュエル&パワーに移管、2019年4月にはさらにJERAに移管された。

発電設備

  • 総出力:516万kW(2019年8月9日現在)
  • 敷地面積:約116万m2
1号系列
発電方式:
 1-1~6号:1,150℃級コンバインドサイクル発電(Combined Cycle)方式
 1-7号:1,100℃級コンバインドサイクル発電(CC)方式
定格出力:100万kW(16.7万kW × 6軸、16.5万kW × 1軸)*
 ガスタービン × 7軸
 蒸気タービン × 7軸
使用燃料:LNG
熱効率:
 1-1、3、5、6号:51.4%(低位発熱量基準)
 1-2、4号:50.5%(低位発熱量基準)
 1-7号:47.2%(低位発熱量基準)
営業運転開始
 1-1号:1985年12月
 1-2号:1986年2月
 1-3号:1986年5月
 1-4号:1986年5月
 1-5号:1986年7月
 1-6号:1986年9月
 1-7号:1986年11月
ガスタービン等取替工事(1-7号は対象外)
 1-1号:2017年6月
 1-2号:2017年12月
 1-3号:2018年7月
 1-4号:2017年9月
 1-5号:2019年7月
 1-6号:2019年3月
* 全軸を合計して最大100万kWとなるよう運転される。
2号系列
発電方式:1,300℃級改良型コンバインドサイクル発電(Advanced Combined Cycle)方式
定格出力:112万kW(16.0万kW × 5軸、16.2万kW × 2軸)*
 ガスタービン × 7軸
 蒸気タービン × 7軸
使用燃料:LNG
熱効率
 2-1、2、4、5、7号:54.3%(低位発熱量基準)
 2-3、6号:54.4%(低位発熱量基準)
営業運転開始
 2-1号:1987年12月
 2-2号:1988年2月
 2-3号:1988年4月
 2-4号:1988年5月
 2-5号:1988年9月
 2-6号:1988年9月
 2-7号:1988年11月
ガスタービン等取替工事
 2-1号:2016年7月
 2-2号:2018年3月
 2-3号:2019年8月
 2-4号:2018年8月
 2-5号:2017年3月
 2-6号:2019年3月
 2-7号:2017年8月
* 全軸を合計して最大112万kWとなるよう運転される。
3号系列
発電方式:1,300℃級改良型コンバインドサイクル発電(ACC)方式
定格出力:152万kW(38万kW × 4軸)
 ガスタービン:24.9万kW × 4軸
 蒸気タービン:13.1万kW × 4軸
使用燃料:LNG
熱効率:55.3%(低位発熱量基準)
営業運転開始
 3-1号:2001年7月9日
 3-2号:2001年12月4日
 3-3号:2003年7月17日
 3-4号:2003年11月13日
4号系列
発電方式:1,500℃級コンバインドサイクル発電(More Advanced Combined Cycle)方式
定格出力:152万kW(50.7万kW × 3軸)*
 ガスタービン:33.6万kW × 3軸
 蒸気タービン:17.1万kW × 3軸
使用燃料:LNG
熱効率:58.6%(低位発熱量基準)
営業運転開始
 4-1号:2008年7月29日
 4-2号:2009年11月10日
 4-3号:2010年10月5日
* 全軸を合計して最大152万kWとなるよう運転される。

付随施設

発電所内にはLNG基地も建設されており、袖ケ浦火力発電所及び姉崎火力発電所などへ供給している。1985年9月にマレーシアからの第1船が入船して以来、マレーシアをはじめとする世界14か国から年間約1300万tのLNGを受入れており、その累計受入量は2009年4月に1億tに到達した。この累計受入量は日本全体のLNG累計受入量の約8%に相当する。

発電所以外にもLNGを供給しており、2001年1月より大多喜ガス株式会社、2006年4月より京葉ガス、2006年12月より関東天然瓦斯開発へガス卸供給を開始し、2007年9月にはLNGローリー販売も開始している。

2009年3月には富津火力発電所と東扇島火力発電所のLNG基地間をつなぐ東西連係ガス導管の運用を開始。これにより、千葉県側の5つの火力発電所(千葉・五井・姉崎・袖ケ浦・富津)と神奈川県側の3つの火力発電所(東扇島・川崎・横浜)を結ぶパイプラインが構築され、LNG供給の安定性向上や発電所とLNG基地の弾力的かつ効率的な運用が実現した。

隣接地には東京電力が運営する「TEPCO新エネルギーパーク」があったが、2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)の影響により、閉園した。

接続基幹系統

  • 富津火力線 - 50万V送電線。内陸部で北上し新袖ヶ浦線に接続。 

4号系列第1軸火災事故

2015年8月16日18時頃、自動停止するとともに建屋3階ガスタービンエンクロージャー内にて火災が発生。富津消防署による消火作業が行われた。

点検の結果、ガスタービンの点検孔をふさぐピンの折損・飛散によりガスタービンの動翼が破損し、過大な振動が発生、ガスタービン軸受の潤滑油配管継ぎ手部に損傷が生じて油が流出し、火災に至ったものとされる。当該第1軸の他、第2、3軸も消火作業および対策工事のため停止していたが、第2、3軸については同年10月14日以降、順次運転を再開した。

一方、第1軸はガスタービン本体及びその付属設備の取替工事を行い2017年9月23日に復旧した。

出典

関連項目

  • JERA
  • 京葉工業地域
  • 日本の火力発電所一覧
  • 火力発電

外部リンク

  • 富津火力発電所

沿岸に建つ火力発電所 StockFoto Adobe Stock

火力発電所(火力発電)(火力発電) 北陸電力株式会社

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